エレベーター内の意匠シートの張替え、再塗装は定期的にあるものです。私たち点検員の立会を依頼される時もありますが、基本的には有償対応になります。
エレベーター内の操作盤の鍵は契約時にお渡ししているので、管理者側で操作する事も可能で、点検員の立会を希望されないお客様もいます。
エレベーター内の意匠シート、再塗装の作業は長時間エレベーターを拘束しますので、利用者が少ない深夜時間に作業をする事が多いです。
深夜に管理者が立ち合う事もありますが、鍵の貸出のみで、管理者は立ち合いをしないという対応もあります。
今回は意匠シートの交換、再塗装などの工事に必要な操作を解説したいと思います。
エレベータードアを任意の位置に固定させる手順
エレベーター会社に連絡を入れる
まず作業を始める前にエレベーター会社に連絡をお願いします。エレベーター各社にて状態を監視している事がほとんどだからです。これから行う操作はエレベーターが故障警報を出すため、受信したら点検員は現地を確認する必要が出てきます。
私が故障待機をしている時、エレベーターの停止信号を受信し確認に現地へ駆けつけたらエレベーター内のダイノックシートの張替えをしていました。
現地に到着するとドアパネルの隙間にダンボールを詰め、閉まろうとするドアを強引に停止させており、これはこれで現地に行っといて良かったな、といった事例ではありました。
他にはエレベーターの停電信号を受信したのですが、エレベーターが3台中、3台が同時に停電しており設備点検をしてるなと予測できたため現地に確認の連絡をいれました。
ところが建物全体が停電しているため固定電話もつながらず、結局現地に確認にいくことになりました。
うーん、なんか悔しい。わかってたのに!
それが仕事でもあるんですが、やっぱりできるだけ手間を省きたい(笑)
こちら都合ではありますが、一報をいただけると助かりますのでよろしくお願いします。
終了予定時間も分かると管理がしやすいので、長めの時間で結構です、開始の連絡時に合わせてお伝えくださいm(_ _)m
警備会社はエレベーター警報を監視していたり、してなかったり、現場ごとに違うので何とも言えませんが、警備会社の連絡先を見つけたら連絡しておきましょう。警報を受信したら彼らも確認に来なくてはなりませんので・・
エレベーターの異常信号を受信して現地に駆けつけると、警備会社の人と出くわし、ありゃお宅もですか?みたいなこともしばしば。
エレベーターの停電信号を受信したときは、設備点検してることが多いので今回も設備点検なんだろうなぁ、と思いながら現地に行くと普通に建物のブレーカーが飛んでたりするので侮れません。
オオカミ少年に騙され続けた村人の気分です(笑)
エレベーター内スイッチボックスを操作する
管理会社からエレベーター用の鍵を渡されるかと思います。鍵が無い場合や、間違えて他メーカーの鍵を借りてしまった時はエレベーターを停止させる事ができませんのでご注意ください。
ただし、非常用エレベーターのみ例外で、非常用であれば非常停止スイッチが鍵なしで操作できる位置にありますので、停止可能です。
誤操作防止のカバーが付いていますので、押し破る必要はありますが・・(カバーが付いてないこともあります)
非常停止スイッチカバーを壊していいのか、管理者に許可をとる必要はあります。

エレベーターで閉じ込めが発生!と聞いて駆けつけたら何故か直ってる場合、こいつが犯人であることがしばしばあります。
なんかこれって押したくなるらしく、エレベーター乗っている間に押してしまい急停止! → 閉じ込め → スイッチ戻す → 知らんぷり といった具合です。
管理者に原因を求められてさんざん調査した挙句、防犯カメラの映像で真因が判明するとなんともせつない・・・。
誤って操作してしまった場合はご一報をお願いします。
続いてエレベーターのスイッチボックスの操作です。
エレベーターが2台以上あり、乗り場ボタンが共通(乗り場ボタンを押すと、どれかのエレベーターが来る)場合は、保守、または専用スイッチを操作します。
エレベーターによって保守と書いてあったり、専用と書いてあったりしますが、機能は一緒です。
この操作をする事でドアが全開した状態で待機し、乗り場ボタンに反応しなくなります。
続いて「停止」のスイッチを操作します。停止スイッチを操作すると、ドアの機能が停止しますが、ドアはゆっくりと閉まってきます。
乗り場側のドアに自動で閉まるための重りが付いており、乗り場ドア単体では勝手に閉まってくる動きをします。乗り場ドアだけであればすぐに閉まりますが、エレベーター内側のドアには開閉するためのドアモーターがついており、ギヤの噛み合いによってゆっくりと閉まってくるのです。
気がついかないくらいゆっくりと閉まってくるため、エレベーターを停止させて道具を準備していたら閉まりきっていた・・という事が発生します。
中からは手で開きますが、外からはロックがかかっているため閉まりきってしまうと、2度と開きません。
エレベーターの点検員が到着するまでは作業中断となりますのでご注意ください。
ドアが全閉しないようにストッパーをかける必要がありますが、おすすめは100均などでも売っている、ウィンドウロックです。防犯グッツの窓の鍵を開けられても、ドアが開かないようにするあれです。
このウィンドウロックですが直ぐ動きが悪くなるため、私はちょいちょい556のスプレーをかけて使用してました。

他にもマイナスドライバーをドアの下の隙間に滑り込ませてクサビをうったり、面白いのではゴムホースを切った物をドアの敷居に差し込んでストッパーにする業者さんもいます。
個人的にはマイナスドライバーは、足で蹴っ飛ばしてしまうので邪魔なんじゃないかなぁと思いますが、ほかにロックをかける物がなければしょうがないですね!
ドアがゆっくりと閉まって来るので、作業に必要な場所で止まるようにストッパーをかけてください。
エレベーター内からの作業であれば、全閉しても手で開きますので、作業状態に応じてドアの位置を調整します。
各スイッチの機能
実際の工事で使用するのは停止スイッチのみになりますが、操作しただけで大変な事になるスイッチも存在します。各社名称が異なるので、自分がわかる範囲ですが紹介いたします。
点検
文字通り点検員が点検するためのスイッチです。操作するとドアが閉まり、乗り場ボタンが利用できなくなります。エレベーター内の開ボタンは効きますが、行先階ボタンは効きません。エレベーター内からですと一見問題ないように見えるので、操作後にエレベーターから降りてしまい、締め出される事があります。
これ、意外とやっちゃいがちで、点検員の私もやってしまった経験があります。
点検スイッチを入れたタイミングで電話がかかってきてとったのですが、エレベーターの中は電波が悪く、何度も聞き返しているうちに うっかり外に出てしまいました(笑)
意識を他に持っていかれると、やってしまいがちかも。
幸い私は点検員なので外からドアを開けることが可能でした、点検員でよかった!?
ファン
エレベーター内のファンをオン・オフするためのスイッチ。作業に支障はありませんが、後日ファンが回ってて寒い、止まってて暑いなどのクレームになる事があります。
昔のエレベーターはそのまま扇風機が壁についてたり、天井に直径30cmくらいのファンがついてて一目瞭然でした。風もゴーといった感じですぐ分かります。
が、最近のはふぃ~・・・といった感じの風で、回ってても止まってても よくわからないです。
お客さんからもこれ回ってる?とよく聞かれます。
最近は3密を意識して1年中オンしていることがほとんどです。
戸開放
ドアを全開にしたままにするスイッチです。一見作業に適しているようですが、スイッチの戻し忘れ防止にブザーが鳴り続けるので深夜作業には適しません。
戸解放スイッチを使用するとブザーが鳴ると知らないお客様が、無意識に入れてしまったことはあります。「異常ブザーが鳴り、エレベーターが停止している」との連絡が入り、確認したところこのスイッチが入ってました(笑)
確かにドア全開でブザーが鳴っているので、操作したつもりがないと故障しているように見えます。
各停
エレベーターが各駅停車になります。防犯のためのスイッチでドアが開いていている時間も長くなります。エレベーターから逃げ出しやすいようにと考えられたスイッチで、夜間だけオンにするという利用が一般的です。
実際に利用するとイライラするので、使っているところは私もあまり知りません。
エレベーターの故障修理で、各停スイッチが常に入り続ける不具合を対応したことがありますが、やっぱりイライラします(笑)
12階建ての建物だったので、かなり長く感じました。
照明
エレベーター内の照明をオン・オフするためのスイッチです。特に説明する事はありませんが、作業中にトイレなどでエレベーターから離れる時は切っておきましょう。
エレベーター点検中も第三者が使用しないよう、照明スイッチを切り、柵を立てますが、それでもエレベーターに乗り込んでくる利用者はいます。
知らずに電源を切ってしまうと閉じ込めになってしまうので、気を使う部分です。
ですので、エレベーターから離れる時は操作盤のロックもかけることをおすすめします。
救出
絶対に操作してはいけません!
エレベーターが複数台設置されている、高層ビルのエレベーターに付いている事があります。
文字通り閉じ込め救出を目的としたスイッチで、操作すると隣のエレベーターが停止します。その後故障中のエレベーター横まで移動し、エレベーター内サイドに設置された扉から隣のエレベーターに乗り込み脱出する。
映画のシーンのような状況を体験できますが、閉じ込め救出の手段は他にもありますので、利用することはまずないです。私も閉じ込め救出での利用は、見た事も聞いたこともありません。
特殊
特殊スイッチは建物ごとに用途が違うので、一概には言えませんが、警備連動として使用している事が多いです。警備連動とはオフィスが無人になって、警備がかかるとエレベーターがその階に行かなくなる機能です。誤って操作したままにすると間違いなく翌日にクレームが来ます!
建物の用途が変ってオフの設定で運用している事もありますので、オンかオフ、どちらかが分からないところがまた厄介。めちゃくちゃ気を使うスイッチです。
第三者が禁止フロアに入り放題なので当然の事ではあるのですが。
以前 点検後にこのスイッチを忘れてしまった点検員がいまして、管理会社 大激怒。
作った報告書・対策が一向に受理されず、事態の収拾に2,3か月かかってます。
最初の状態がどの状態だったか?特に注意が必要なスイッチです。
まとめ
まとめです。
- エレベーター会社・警備会社に連絡する
- 専用または保守スイッチを操作する(あれば)
- 停止スイッチを操作する
- ドアストッパーをかける
エレベータースイッチボックスには他にもスイッチが設置されています。無意識に操作してしまうと元に戻すのが難しいので、最初にスイッチ全体の写真を撮っておくと安心です。
私もよく全体も写真を撮って、作業終わりに答え合わせをします。
スイッチひとつでエレベーターの動きが変わってしまうので、特に注意したいところです。
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